公共・協同経済研究情報国際センター日本支部
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第28回学会大会 開催報告

昨年12月に開催いたしました、第28回研究大会の学会賞、奨励賞の受賞者と各シンポジュウムの概要をご報告いたします。

 

【学会賞】

花田 真一 『再生可能エネルギー普及政策の経済評価』(三菱経済研究所・2012年7月)

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【奨励賞】

岩出 和也(東洋大学大学院) 「行政機関におけるICT活用の現状と課題―情報サービス・クラウドコンピューティングの利活用とリスク―」

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『2025年の電子書籍』

パネリスト: 池田敬二 (電子出版制作・流通協議会)、江草貞治 (有斐閣)、落合早苗 (hon.jp) 、 瀬尾太一 (写真家・日本写真著作権協会常務理事)

コーディネータ: 山口 翔(名古屋学院大)                 [敬称略]

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 本セッション前半では3度目の「電子書籍元年」とされるここ数年を振り返り、電子書籍の普及以前・以後で変化した文脈についてふれた。多様な端末の普及に伴い、電子書籍利用機会の多様化が観察される一方で、紙の本には手元に残しておく価値のある「モノ」としての体験が重要視されるのではないかという観点、読書が情報を得る行為なのだとすればその行為自体に変化は無く、ICTが高度化する中で読書におけるツールやニーズが変化していく事はむしろ当然であるといった流れがみられた。

 後半では縮小傾向にある出版業界の今後に話が及び、自己出版が台頭する一方、誤字脱字チェックやスケジュール管理と言った編集プロセスの必要性も残るという観点、契約書を交わさずお互いの信用でやってきた作家・出版者の関係や、三位一体でやってきた版元・取り次ぎ・書店との関係など、ここまで出版業界を支えてきた仕組みをそのまま維持していくことは難しいだろうという流れがみられた。

 最後には、かつて多くの中小出版社がもっていたベンチャー的な思想が少なくなった事にふれられ、既存の仕組みを守ろうとすることに精一杯になるのでは無く、新しい市場構築に向けた取り組みの必要性が示された。

 


 

 

『2025年のデジタル教科書』

パネリスト: 代田昭久(武雄市教育委員会教育監)、中村伊知哉(慶應義塾大)、  白石真澄(関西大)

コーディネータ: 石戸奈々子(CANVAS)                 [敬称略]

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デジタル教育の議論は20年も行われている。しかし今なお賛否が分かれている状況だという。デジタル教科書に関し、政府は2020年に小学生のPC一人一台環境を実現するとしているが道は険しい。これに対しDiTTはじめ民間も独自の展開をしており、教科書会社のプラットフォームなども始動している。他方、武雄市に代表される自治体の動きが高まっているという。海外は進んでおり、韓国はデジタル教育が本格普及するだけでなく、教材の標準化やソーシャルメディアの利用なども進んでいることが共有された。台湾、タイも日本の先を行く。ところが日本では、デジタル教育への批判がみられ、成果を求める声がやまない、という議論もたたかわされた。デジタル教科書を正規化するための法整備や、コスト削減のための「一人一年一万円」などの仕掛けが重要という議論も行われた。
本セッション最大の見どころは、武雄市が進める反転授業+iPadの取り組みだ。
教員は正解を教えるものだったが、反転授業・デジタル学習は先生のファシリテート力が問われる。学習指導要領は「教える」時間を規定するが、どれだけ学び、どれだけ理解が進んだかが大事だ。とする代田氏の問題提起が参加者に響いたものと思われる。


『2025年の ICTビジネス』

パネリスト: 伊藤昭浩(名古屋学院大)、大木洵人(シュアール)、川上量生(ドワンゴ)、 夏野 剛(慶應義塾大)

コーディネータ: 仲上健一(立命館大)                  [敬称略]

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本セッションは、これから10年あまり先のICTビジネスについて、実業界から3人、研究者1人を招いてパネル討議をおこなった。まずコーディネータが各パネリストを紹介した後、それぞれ15分程度の報告がされた。伊藤氏は『Campus Generated Media』というタイトルのもと、まずICTビジネスのレイヤー構造を簡潔に紹介し、大学がプラットフォーマーとしての役割を果たす実例と今後が報告された。大木氏は『「手話×IT」が生み出すビジネス』というタイトルのもと、手話のIT事業を多数展開する現状と、これからのビジネス展望が報告された。川上氏は『未来の電子書籍』というタイトルのもと、特にユーザー体験からの電子書籍のメリット/デメリットを指摘し、電子化に向かう未来が報告された。夏野氏は『人口減少社会におけるITの重要性』というタイトルのもと、各統計資料を交えながらわが国の現状を指摘し、IT化に向かう重要性が報告された。

その後、大勢の方が集まったフロアからの質疑応答では、特に川上氏、夏野氏が中心となって「2025年のICTビジネス」について活発な議論がされた。多種多様な報告および質疑応答から、次のステージに向かうICTビジネスの“入り口”がみえたセッションとなった。


『2025年のICTインフラ』

パネリスト: 菊池尚人(慶応義塾大)、砂原秀樹 (慶應義塾大学)、野村宗訓(関西学院大)、 山田 肇(東洋大)

コーディネータ: 谷脇康彦(内閣審議官・内閣官房情報セキュリティセンター副センター長)       [敬称略]

 冒頭にコーディネータの谷脇内閣審議官から、ICTインフラ=「情報通信連携基盤」と考えてよいかとの討議範囲設定があった。続けて、オープンデータ、パーソナルデータ、センサー等M2Mにより膨大なデータが保存・蓄積さることが示され、その見える化を通じた課題解決等が提示された。

 ショートプレゼンテーションでは、菊池氏が、時代によって異なる技術進歩、戦争と技術、世界で均一化するICTインフラについてコメントした。砂原氏は、自動車情報とビックデータ、センサーと災害情報などを例に、技術変化と社会について言及し、情報銀行の有用性を提唱した。野村氏は、次世代エネルギーネットワークの構築を補助線に、インフラの国際連携の在り方等に触れ、電力規制と情報通信規制の手法についての討議へと進んだ。山田氏は、課題解決型のバックキャスト手法によるインフラ政策等の有効性を提案した。

 ディスカッションでは、様々な論点について活発な意見交換がなされ、医療、農業、教育といった異なる領域でICTインフラを利活用することにより、部分最適ひいては全体最適が達成されることが共有された。


次世代研究部会セッション『2015年のネット選挙』

基調講演: 前田浩智(毎日新聞社)

パネリスト: 生貝直人(国立情報学研究所)、石戸 諭(毎日新聞社)、 前田浩智(毎日新聞社)、松原真倫(慶應義塾大大学院政策・メディア研究科)、 山口 翔(名古屋学院大)

コーディネータ: 西田亮介(立命館大)                  [敬称略]

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本セッションは、2013年に解禁されたネット選挙とその将来展望について、2015年の統一地方選挙、2016年の国政選挙を念頭において、現状やジャーナリズムの新しい展望、民主主義と公職選挙法のあり方等について議論を行った。

まずコーディネータがネット選挙の現状について簡潔に紹介して、セッションは始まった。基調講演は毎日新聞社前田浩智政治部長。ネット選挙報道で先駆的な取り組みを行った同社が、どのように、またどのような体制で取り組んだのかという内容であった。政治部を中心に社会部、デジタル・メディア局の3部合同体制と、Googleや立命館大学とのパートナーシップを形成することで、柔軟に対応した。

その後、中心的役割を担った石戸諭記者が分析の概要を紹介した。政策的な内容を伴ったコミュニケーションが乏しかったことや、原発や憲法改正関連の主題が、RT等によって見た目のボリュームが大幅に増加していたことが紹介された。

その後、山口、松原、生貝の3氏がコメントを行った。Twitter分析の射程や、受け手分析の可能性などについて議論が交わされた。

その後の質疑応答でも、午前の一つ目のセッションにもかかわらず、大勢の方が集まったフロアからも活発な質問があり、改めて2013年に解禁された当該主題への関心の高さを伺い知ることができたセッションとなった。


Ciriec International セッション『市民の一般利益サービス(SGI)と社会連帯経済-アジアの社会的企業モデルを求めて-』

パネリスト: 牧野松代(関西外語大)、田端和彦(兵庫大)、金谷信子(広島市立大)、 金子勝規(大阪市立大)

モデレーター: 今村 肇(東洋大)                     [敬称略]

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CIRIEC InternationalはEUの委託により、EU各国における社会的経済と公共政策の関連についてレポートを作成し、市民の一般利益サービス(SGI)供給における社会連帯経済や社会的企業の役割について政策提言を行っている。さらにEUではこれまでの社会連帯経済に加えてあらたに社会的起業家を政策パートナーとして位置づけている。

本パネルはEUにおける動きを簡潔に整理しながら、日本やアジアにおける社会的企業・社会連帯経済が市民の社会的一般利益サービス(SSGI)供給において果たす可能性を検討し、アジアの文脈での社会的企業モデル構築の議論を行った。

日本だけでなくタイの医療福祉事業も含め得られた重要な論点は、1)コミュニティーとの関わり(共通理念としての社会的包摂とシティズンシップ)、2)SMCB(スモールビジネス・コミュニティービジネス)の視点重視、3)縦割りの弊害を排除した政府・地方公共団体とのパートナーシップの強化、の3点であった。

CIRIECやEMESの社会的経済・社会的企業モデルの国際比較プロジェクに呼応して、アジア各国と協働しつつ本パネルを契機とし出版を行うこととした。


大会日程

 

第28回研究大会

開催要項

第28回研究大会について、最新の情報をお伝えします。

日程:2013年12月7日(土)~8日(日)

会場:慶應義塾大学 日吉キャンパス

 

12月7日(土)

9:10~ 受付 (第6校舎 J611教室前)

9:30〜11:50 Ⅰ 院生セッション

1日目 < 127() >

 Ⅰ / 9:30〜11:50 

—A奨励賞報告① J611教室

—B奨励賞報告② J612教室

—C奨励賞報告③ J631教室

審査委員
今村  肇(東洋大学)
森 由美子(関東学園大学)
審査委員
西村 陽(関西電力株式会社)
小熊 仁(金沢大学)
審査委員
植野 一芳(大東文化大学)
齋藤 香里(千葉商科大学)
近世における蚕糸絹織物業の動向及び日中比較報告者:烏蘭其其格(兵庫県立大学大学院) 富山市のLRT導入における社会的合意形成の要因
-公共選択理論を前提とした合意形成過程に対するレジーム・アクター分析の視点から-報告者:稲澤 泉(京都大学大学院地球環境学舎)
行政機関におけるICT活用の現状と課題 ―情報サービス・クラウドコンピューティングの利活用とリスク―報告者:岩出 和也(東洋大学大学院経済学研究科)
韓国の電力産業が抱える問題と料金政策報告者:徐 明玉(創価大学大学院経済研究科) デジタル教科書導入の費用試算報告者:小河 智佳子(東洋大学大学院経済学研究科) 医薬分業制度と生涯健康医療電子記録
-日本と韓国・カナダの事例-報告者:江口 雅彦(滋賀大学大学院経済学研究科)
中国の地方企業47社の社会的責任に関するアンケート調査分析報告者:程 天敏(中央大学大学院経済学研究科)  東京都における終夜バス運行の意義と課題報告者:笠井 文雄(早稲田大学大学院商学研究科) 再生不可能資源の課税制度の国際比較報告者:何 彦旻(京都大学大学院経済学研究科)
中国の農業・牧畜政策における環境問題
―内モンゴルの砂漠化を事例に―報告者:嘎日迪(大東文化大学大学院経済学研究科)
減価償却資産別の法人実効税率の推計報告者:澁谷 英樹(南山大学大学院総合政策研究科) 地方自治体による国際見本市出展に関する一考察報告者:藤原 直樹(大阪市立大学大学院経営学研究科)

 

11:50~12:30 奨励賞審査会 (第6校舎 J612教室)

12:10~      理事会     (第6校舎 J611教室)

 

12:00~受付 独立館 DB202教室前

 / 13:00〜15:00

—A パネルディスカッション  DB202教室

—B パネルディスカッション  D412教室

『2025年のICTビジネス』

パネリスト

伊藤 昭浩(名古屋学院大学)

大木 洵人(シュアール)

川上 量生(ドワンゴ)

夏野  剛(慶應義塾大学特別招聘教授)

コーディネータ

仲上 健一(立命館大学)

 

『2025年のデジタル教科書』

パネリスト

白石   真澄(関西大学)

代田   昭久(武雄市教育委員会教育監)

中村 伊知哉(慶應義塾大学)

コーディネータ

石戸 奈々子(CANVAS)

14:45~休憩

15:00~会長挨拶・主催校挨拶(独立館 D412教室)

 /15:10〜17:00

—A パネルディスカッション  DB202教室

—B パネルディスカッション   D412教室

『2025年のICTインフラ』

パネリスト

菊池 尚人(慶應義塾大学特任准教授)

砂原 秀樹(慶應義塾大学)

野村 宗訓(関西学院大学)

山田  肇(東洋大学)

コーディネータ

谷脇 康彦

(内閣審議官・内閣官房情報セキュリティセンター副センター長)

 

『2025年の電子書籍』

パネリスト

池田 敬二(電子出版制作・流通協議会)

江草 貞治(有斐閣)

落合 早苗(hon.jp)

瀬尾 太一(写真家・日本写真著作権協会常務理事)

コーディネータ

山口  翔(名古屋学院大学)

17:10~ 総会(独立館 D412教室)

総会Ⅰ:表彰式、新理事選出(総会一時中断)、新理事会

総会Ⅱ:新役員報告


12月8日(日)

9:30~受付(独立館地下 DB202教室前)

 /10:00〜12:00

—A 次世代研究部会セッション     DB202教室

—B 一般報告   D412教室

『2015年のネット選挙』

基調報告:

前田 浩智(毎日新聞社)

セッション:

パネリスト

生貝 直人(国立情報学研究所)

石戸  諭(毎日新聞社)

前田 浩智(毎日新聞社)

松原 真倫(慶應義塾大学政策・メディア研究科)

山口  翔(名古屋学院大学)

コーディネータ

西田 亮介(立命館大学特別招聘准教授)

 座長:和田 尚久(東洋大学)

各国におけるウェブアクセシビリティ義務化の動向

報告者:山田  肇(東洋大学)

遊間 和子(国際社会経済研究所)

討論者:菊池 尚人(慶應義塾大学特任准教授)

 

青少年保護バイ・デザインと言う選択アーキテクトのデザインの必要性と課題

報告者:齋藤 長行(青山学院大学)

討論者:片桐 徹也(東洋大学)

 

 

12:00~ 昼食

 

 /13:00〜15:00

—Aパネルディスカッション ⑤   DB202教室

—B Ciriec Internationalセッション D412教室

 『2025年のICT社会  —官民の役割分担—』

パネリスト

石川   准(静岡県立大学)

片山 さつき(参議院議員)

南場 智子(DeNA)

西田 亮介(立命館大学特別招聘准教授)

樋渡 啓祐 (武雄市市長)

コーディネータ

松原   聡 (東洋大学)

 

 『市民の一般利益サービス(SGI)と社会連帯経済-アジアの社会的企業モデルを求めて-)』

パネリスト

牧野 松代 (関西外語大学)

田端 和彦 (兵庫大学)

金谷 信子 (広島市立大学)

金子 勝規 (大阪市立大学)

ほか

モデレータ

今村 肇(東洋大学)

 /15:10〜17:00

—A シンポジウム     DB202教室

—B 一般報告    D412教室

 『2045年世界と日本のICT技術と競争—』

パネリスト

生貝  直人 (国立情報学研究所)

稲見  昌彦 (慶應義塾大学)

猪子  寿之 (チーム・ラボ)

境    真良 (経済産業省)

林 紘一郎 (情報セキュリティ大学院大学)

水口  哲也 (慶應義塾大学特任教授)

コーディネータ

中村伊知哉(慶應義塾大学)

座長:牧野 松代(関西外国語大学)

1990 年代のエマージング市場諸国の通貨・金融危機とその教訓

報告者:鈴木 真実哉(聖学院大学)

討論者:小澤  太郎(慶應義塾大学)

米国の国立公園事業補助金の配分への連邦議会委員会の影響 : 構造方程式モデリングによる実証研究

報告者:大久保 利宣(京都大学大学院生)

討論者:衣笠  達夫(追手門学院大学)

政策誘導の市場における効力 -合成洗剤対策条例を事例として-

報告者:花田 真一(金沢星稜大学)

討論者:穴山 梯三(国際公共経済学会常任理事)

17:30~ 懇親会(来往館 ファカルティクラブ)